ワーケーション×関係人口の可能性~日本関係人口協会第8回セミナーレポート~

2026年2月5日(木)、日本関係人口協会の第8回オンラインセミナーを開催。ゲストは入江 真太郎さん(一般社団法人日本ワーケーション協会 代表理事)。ご自身の経験から、北海道から沖縄まで日本各地との関わりが深く、日本の様々な地域でプロジェクトに携わり実践を通じ、地域、企業、個人に対して成果をあげてきた社会起業家です。今回は、「ワーケーション×関係人口の可能性」をテーマに、当協会代表理事・指出 一正との対談を通じて、「働く」を入り口にした地域との幸福な関係づくりや、自治体・企業が今取り組むべき視点などについて、その核心に迫りました。

目次

ワーケーションについて

コロナ渦を通して増えたライフスタイルの選択肢

まず、改めて「ワーケーション」という言葉について振り返ると、
Work(仕事)+Vacation(休暇)=Workcation —— つまり、「場所を変えて豊かに暮らし働く手段」のことであり、世界的な流れにおいても、コロナ渦を通して増えたライフスタイルの選択肢だといいます。

トレンドの変化

リモートワークの実施率変化を見てみると、2025年7月11日-15日時点でのリモートワーク実施率は22.5%で、前年同期比でほぼ横ばいで、2023年以降、全体的なリモートワーク実施率は安定的な定着傾向を見せているということです。

大手企業からトレンドの変化に目を向けてみると、企業規模別では従業員10,000人以上の大手企業においてテレワーク実施率が34.6%で前年から3.6ポイント減少しており、昨年と比較すると中小企業へのテレワークのトレンドが移っていることが見てとれるそうです。

また、リモートワークの継続意欲の変化については、今後もテレワークを続けたいと答えた正社員が82.2%にのぼり、テレワーク継続意向の希望は非常に高く、働き方の多様化の中で、テレワークは転職産業でも企業側の1つのアピールポイントとなっていることをふまえ、企業側としてはこれらをどう捉えていくかが重要だといいます。
※以上のデータ引用元:パーソル総合研究所「第十回・テレワークに関する調査」

ここでさらに興味深いデータがあります。それは、「無自覚ワーケーション」という実態です。実は、ワーケーション ”っぽい” ことを実際にはしているが、「ワーケーションをしてると自覚して」している割合は約25%で4人に1人だといい、実態がつかみにくいのはこうした点があるからとも言えるのだそうです。

※データ引用元:パーソル総合研究所「ワーケーションに関する定量調査調査結果」

ワーケーション中の体験と効果

ワーケーション中の「現地で交流した体験」としては、全体的に一般の観光よりも多い傾向にあるそうで、それも偶発的な要素が高く、「親睦会」や「体験談を聞く」、「連絡先の交換」、「議論する」など、踏み込んだ関係性を構築するのは、圧倒的にワーケーション実践者の方が割合として高い傾向がみられます。効果の面においては、ワーケーションや旅行後における変化として「意識の変化」「行動の変化」「成果」の変化は全て観光と比較して上昇率が高く、とくに「ワーク・エンゲージメント」の向上率は、観光と比較して高い傾向にあり、全体としてワーケーションをすることで、仕事にいい影響を与えていると言えます。
※データ引用元:パーソル総合研究所「ワーケーションに関する定量調査調査結果」

入江さんにはここまで、あらためて「ワーケーション」という言葉そのものから、近年のトレンドの変化、その実態に至るまで、とてもわかりやすく解説していただき、理解を深める時間となりました。

地域の事例

続いて、さきほど「現地で交流した体験」が「ワーケーションを通じて仕事にいい影響を与えている」という流れから、地域の具体的な事例についてご紹介いただきました。

「コワーキングスペース」と聞くと、全国各地に広がっている印象がありますが、入江さんは、「一方的に仕事をするだけの場所は、本来はコワーキング(Co-working)ではなく、Co(注:「共同」などの意味)と言うからには、利用者同士、交流もできる場所だと思っています。」

島根県松江市の「enun」は、「縁がつながって、雲のように人が自由に集まり、あたらしいことに出会える場所」として、地元サポーターと松江にワーケーションで訪れたアンバサダー(松江ファン)の方々が発案して、松江ニューアーバンホテルに誕生し、地元のワーカーから地域外から訪れる人やデジタルノマドなど、様々な方々が集まる場所となっているそう。こういった、「ローカルサイド」のコワーキングが重要なのだといいます。

また、地域で完全民間自走化するワーケーションの取り組みの例として、神奈川県鎌倉市の民間主体で作り上げている「鎌倉ワーケーションWEEK」。「テレワークで過ごせる街」を目指していた鎌倉市の動きとの相乗効果を生んでいます。今では、独自でパートナー企業を集めるなど、民間事業者で鎌倉ワーケーションWEEK実行委員会を作り、地域に根付きながら、本業や副業を通じて、自己実現や社会参画を目指す人々が集まるイベントとなっています。

いずれの事例も、単に「場」だけを提供するのではなく、地域主体で近隣や地域外から訪れる人々などがまさに共同(協働)で運営し、素敵な交流が生まれていることが印象的でした。

多様化している企業ワーケション

こうした中で、働き方の多様化で分散化したリアルなコミュニケーションの場、学びの場をワーケーションの考え方で取り入れる企業と地域が増えているというお話を伺いました。

「企業型ワーケーションのポイントは、「決済を取れる内容であるか」ということです。」

例えば、長野県立科町では、「立科WORK TRIP」で企業のオフサイトミーティングや開発合宿を受け入れ、企業ワーケーションに寄り添った提案を活発にされているほか、「めがねのまち」としても有名で製造業が集積する福井県鯖江市では、ものづくり産業とSDGsの取り組みを学びに多くの企業が訪れています。

新潟県糸魚川市では、「親子ワーケーション」から派生して、実際に年間に3回、子供達を小学校に通わせることができるプロジェクト「シー・ユー・アゲイン・プロジェクト」が発足。地元の小学校への体験入学という形で着実に増えており、自治体としても、関係人口づくりに大きく貢献をしているプロジェクトで、親子ワーケーションの多様性を感じる取り組みとなっているそうです。

さらに、宮崎県日向市のグローバルワーケーションの事例についてもご紹介していただきました。韓国の食品メーカー大手・デサンホールディングスの企業ワーケーションを誘致し、2025年3月にモニターツアーを実施。宮崎県日向市との連携協定を締結し、韓国の株式会社hoppersと連携した事業で、国境を超えた、企業型ワーケーションの事例をいち早く作った例です。

以上、一口に「企業ワーケーション」と言っても、様々な形があり、それも国内にとどまらず、グローバルな展開についてのお話まで、入江さんからお聞きすることができ、新たな発見の連続となりました。

最後に入江さんからまとめとして、ワーケーション等を通して少しずつできているのは、「何度も訪れたくなる」仕組み。そこには必ず「人・地域」が存在し、「企業」が関わることもあること、そして、「関係人口の潜在価値はこれからもゆるりと向上していく」との言葉で講演パートを締めくくっていただきました!

クロストーク

そしてここからは、強力なファシリテーターとして義達 祐未さんにも入っていただいてのクロストークパート。義達さんは、日本関係人口協会 理事であり、日本ワーケーション協会 公認コンシェルジュです。

まずは、「お二人にとって、それぞれのキーワードはどう見えていますか?」という問いからスタートしました。

指出からは、「場所が生まれると人が集まります。自分自身もお気に入りのコワーキングスペースがあり、1つは兵庫県洲本市のシマトワークスさんが運営されているところ(Workation Hub 紺屋町)と、もう1つは、萩・石見空港の会議室。いずれもとても居心地がよく、お気に入りスポットです。」

入江さんからは、「関係人口という言葉自体ちょっと堅いと思っていて、自分としては ”外から来てくれる友達” くらいの感覚に思っています。」

また、ワーケーションの実例の話題になると、ワーケーションは「刺激とリラックスが同時」という興味深いキーワードも飛び出しました。普段、仕事をしている場所とは別の地域に飛び込むことは、新たな人や場所との出会いという「刺激」、それと同時に自然や落ち着いた環境という「リラックス」が存在する――これはワーケーションの特徴のひとつとして、実はあまり意識されていないことかもしれません。こういった要素こそが、仕事にいい影響をもたらしたり、そこで知り合った人や関係人口のみなさんのウェルビーイングにつながっている、という示唆にもなりました。

義達さんからも、「ワーケーションにおける「余白」はとても大切で、純粋に地域を楽しむ時間はとても豊かな経験ですね。」

そして入江さんからは、受け入れ地域側が「一生懸命じゃなくていい」という重要な投げかけがありました。これは、これまでのゲストをお迎えしての関係人口オンラインセミナーシリーズでもたびたび共通の話題として上っており、受け入れ地域側も、訪れる側も、自然体で向き合うことは、ワーケーションの視点においても同様にポイントであることがわかりました。

Q&Aセッションでの議論

クロストークが進むなか、参加者のみなさんからはリアルタイムで質問が入ってきており、義達さんから最初の質問が読み上げられました。

「過疎地活性化策の一手段として、ワーケーションをとらえた場合、当該自治体やその関係者は、どのような対応、取り組みが可能となりますでしょうか? いわゆる観光地ではない小さな村です。自然は豊かですが、人口が少なく、情報発信力がないところです。たとえば、さきほどの親子ワーケーションなどは、その場所が選ばれる手段が必要だと思っています。」

これに入江さんがすぐに答えます。

「たとえば、福島県川内村で実際に現地で感じたことですが、小さいからこそ、小さければ小さいほど、そのよさは明確にあります。たとえば、その地域を訪れて、3人くらいと話せば、だいたい地域全体のことがわかるとか。」

指出からは、

「僕は ”弱さの交換” と言っていますが、関係人口もワーケーションも、お互いに困っていることや不安なこと、弱さをお互いに出しあって…小さな村では、”小ささの共有” から考えてみるのもいいと思います。」

お二人からの事例を交えた深いお話に、質問をくださった方からはリアルタイムで、「アドバイス、ありがとうございます。”弱さ、小ささの共有” など、参考にさせていただきます。」との、さっそくのコメントもいただきました。

ここで地域の方からの具体的な質問が続きます。

「京都の場合、京都市が強すぎるため、ほかのコンテンツが薄い地域が企業にワーケーションの場所として選んでもらうことが難しいように感じています。このような場所が企業側に選ばれるためにどういったことができるでしょうか? 何に対してどういうPRを打てばいいなどあれば教えていただきたいです。」

京都を中心に活動をされている入江さんがすかさず話します。

「これは個人的にはとてもよく理解できます。すでに京都では ”海の京都”、”森の京都”、”お茶の京都” という打ち出し方もしていて、そういう方法もとてもいいと思っています。ぜひ、そういう側面からもワーケーションの場所として選ばれる場所を増やしていきたいですね。」

以上、今回のオンラインセミナーのQ&Aも、各地域のみなさまからの生のお悩みや課題が寄せられ、おかげさまでとても有意義なセッションとなりました。

まとめ

今回、「ワーケーション×関係人口の可能性」というテーマから、みなさんは最初にどんなことを想像されたでしょうか? 入江さんからは、ワーケーションについてあらためて基本的なことを教えていただきながら、近年のトレンド、グローバル展開のお話まで幅広くお伺いすることができ、「無自覚ワーケション」という言葉にも象徴されるように、あらためて自分のワークスタイル、ライフスタイルを見つめ直す時間にもなったように思います。

また、ワーケーションを通して「何度も訪れたくなる」仕組みが少しずつできてきていて、そこには必ず「人・地域」が存在していることから、「関係人口の潜在価値はこれからもゆるりと向上していく」 という言葉は何より心強く感じました! 関係人口は「外から来てくれる友達」という言葉も、ふだんワーケーションを通じて各地域の方々と密に活動をされている入江さんらしく、地域側も「一生懸命じゃなくていい」、さらには指出の「弱さの交換」という言葉にもあったとおり、ワーケーションにしても、関係人口にしても、自然体でいることがいろいろな可能性を開いていくのだと感じさせてくれました。

そういうなかで、義達さんの言葉にもあった、地域を純粋に楽しむ時間、「余白」を意識できたら、それはまさにウェルビーイングなのだと思います。今回も(きっと)日本各地からたくさんの方にご視聴いただき、ホストの指出をはじめ、ゲストの入江さん、クロストークのファシリテーターを務めていただいた義達さんと、素敵な時間を共有することができました。どうもありがとうございました!

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