「プログラムの中身は固まってきた。でも、どうすれば気軽に参加してもらえて、一度きりで終わらない関係になるんだろう?」
石川地域づくり協会が主催し、一般社団法人日本関係人口協会と株式会社雨風太陽が運営する「いしかわ関係人口塾」。2026年10月3日(土)、石川県庁行政庁舎で第3回となるDay3が開催されました(オンライン同時配信)。
Day1では「地域目線」、Day2では「関係人口目線」で、それぞれの地域のプログラムの中身を深めてきました。Day3のテーマは「参加しやすく、続けたくなる仕組みをつくる」。関係人口と向き合ってきた2人の実践者の事例講義と、石川県の関係人口ポータルサイト「いしかわのWa!」への掲載を見据えたワークショップの様子をお届けします。


めざすのは「実践」!Day3は「テクニック」と「段取り」の回
冒頭、事務局からこれまでの振り返りがありました。Day1では、地域の課題やニーズを出し合い、「地域住民でできること・すべきこと」と「外の人に期待したいこと」を分けて考えながら、プログラムのイメージと参加してほしい人物像を描きました。Day2では、そのプログラムが関係人口から見て本当に「参加したくなる」ものになっているかを問い直し、参加者の「やりたい」気持ちに応える工夫を考えました。
Day3は、これまで2回かけて深めてきた「何をやるか」に、参加のハードルを下げる工夫や、参加後も関係が続く仕掛けといった「テクニック」を取り入れ、「いしかわのWa!」への掲載に向けた具体的な段取りを詰める回です。Day4(最終発表会)までの秋から冬にかけては実践・伴走期間。この日は、それぞれのプログラムを実際に動かすための準備の場となりました。

講座ダイジェスト:地域外の人と一緒につくるプログラムの工夫
「フォロワー」ではなく「仲間」をつくる

(講師:株式会社One 代表取締役 宮野義隆 氏)
1人目の講師は、金沢市才田町で米やれんこんなどを育てる農業法人を営む宮野さん。「関係人口を求めて何かをしてきたわけではなく、結果的に『これって関係人口だよね』と言われるようになった」と、試行錯誤の中で見えてきたことを、失敗談も含めて率直に語ってくださいました。
最初に紹介されたのは、田植え体験の失敗談です。体験は満足度が高い一方で、休日に従業員が対応する負担も大きいもの。そこで「来てくれた人にお米を売ろう」と考えましたが、ほとんど売れなかったといいます。
「下心って、見透かされるんです」
一方、思わぬ形で人が集まったのが、出荷できない小さなじゃがいもを持ち帰ってもらう「畑の開放」でした。公式LINEとSNSで呼びかけたところ、畑はあっという間に空に。近くの電柱にLINE登録用のQRコードを貼っておいただけで、「また何か案内してくれるんでしょ」と登録者が少しずつ増えていきました。スタッフは置かず、来た人に何かを求めることもしない。それでも、来た人が友人を誘い、輪が広がっていったそうです。
この経験から宮野さんが大切にしているのが、「来る人をこちらから限定しない」こと。インスタグラムのタグ検索で「近くで何かやっていないか」と探して来た人が、のちにコアなファンになることもあります。現在は無人で行っている「れんこん詰め放題」では、常連の参加者が新しく来た人に手順を教え、さらに人を呼んでくれるまでになりました。手伝ってくれる理由を尋ねると、「その人らが喜んでもらえるがが、すごくうれしいがや」という答えが返ってきたといいます。自分たちに代わって地域や農家の魅力を語ってくれる「応援団」の存在は、身が引き締まるものだと宮野さんは話します。
講義の最後には、地域で動く参加者へ向けて3つのメッセージが贈られました。
- 広報やフォロワー数を追わない:フォロワーが増えても、関心の合わない人には届かない。日々の姿を発信するだけで十分
- ターゲットを都合よく限定しない:来る人の動機を否定しない。限定するほどブレーキがかかり、広がらない
- 現場を開き、足元から関係をつくる:祭りのように、そこで暮らす人たちの熱気に触れたとき、人は「参加したい」と思う
質疑応答では「誰が来るかわからない無人運営に、地域の人から不安の声はないか」という質問も。宮野さんは、地域の人から言われたことにはきちんと応えていくことで認めてもらえる、と答えていました。
お客さん扱いしない。「一緒につくる」関係のつくり方

(講師:株式会社こみんぐる 取締役/一般社団法人現代集落 代表理事 林俊伍 氏)
2人目の講師は、金沢市生まれで、金沢と珠洲市の二拠点生活を送る林さん。「100年後も家族で暮らしたい・働きたい地域をつくる」を掲げ、金沢市内24軒の宿の運営や、道の駅「狼煙」の運営など、地域総合商社として幅広い事業を手がけています。
講義の中心は、珠洲市真浦で2020年に始まった「現代集落」の取り組みです。震災で住民がいったんゼロになった集落に、現在は年間1,000人以上が訪れ、80人以上が関係人口として集落づくりに関わり続けているといいます。林さんは、関係人口を増やすうえで気をつけていることを4つのポイントにまとめて紹介してくださいました。
- お客さん扱いしない:月額制のオンラインサロンとして、参加者にはお金を払って来てもらう。拠点の掃除も自分たちで行い、水や電気も自給。シャワーのお湯が途中で止まっても、みんなで笑い合える関係性
- 足りないことを一緒に楽しみ、いっしょにつくる:何も決まっていないこと、できていないことを共有し、「どうやったら一緒にやれるか考えて」と投げかける
- ただの人工(にんく)にしない:草刈りをお願いするだけでは労働力扱いになってしまう。知的好奇心を満たす活動や、人との出会いをきちんと設計する
- 自分たちが楽しむ:自分たちが楽しんでいる場所にこそ、人は集まってくる。一緒にお酒を飲み、同じ屋根の下に泊まることで、関係はぐっと深まる
プロジェクトの多くは関係人口のメンバー自身が回しており、林さん自身は「黒子としてみんなが楽しむことに徹する」役割だといいます。大学の研究室と取り組む畑づくりや二十四節気の食文化の記録、オフグリッド電力や水の浄化設備づくりなど、関わる人の「やってみたい」から生まれたプロジェクトが集落に広がっています。 「関係人口を増やすうえで一番効果的なのは、一緒に仕事(プロジェクト)をつくること」と林さん。質疑応答では、困りごとを解決するだけの仕事はクライアントワークになりがちで「やって終わり」になってしまう、30年後のビジョンを先に描き、「一緒にこの未来をつくる仕事をしよう」と声をかけることで、「自分がつくったプロジェクト」という思いが生まれ、関係が続いていくと語りました。運営資金についても、立ち上げ期は助成金や会社の利益で支えながら、参加費やオンラインサロンの会費で自走できる割合を徐々に増やしていくという、現実的な話が共有されました。
いしかわのWa!とは?
ワークショップに先立ち、石川県地域振興課の担当者から、関係人口ポータルサイト「いしかわのWa!」の紹介がありました。
能登半島地震や奥能登豪雨もあり人口減少が加速する中、定住人口だけで地域を支えることは難しくなっています。「いしかわのWa!」は、地域の困りごとや「こんな地域にしたい」という思いをプログラムとして掲載する「オーナー」と、それに共感して参加する県内外の「サポーター」をつなぐ、関係人口と石川県をつなぐ「架け橋」となるサイトです。
昨年11月のリリース以降、サポーターは県外からの登録が多く、プログラムが新たに掲載されるタイミングで登録者が増える傾向にあるとのこと。オーナー登録の要件についての補足もあり、受講生が実際に掲載へ踏み出すための後押しとなる説明でした。
ワークショップ:ハードルを下げ、続く関係をつくる
ワークショップは、テーブルごとの自己紹介とDay2の感想共有からスタートし、2つのワークに取り組みました。
ワーク1:ハードルを下げる・継続関係を作る仕掛けを盛り込む
ワーク1では、まずプログラムに参加してほしい人の具体像を改めて描いたうえで、その人にとっての参加ハードルを下げる工夫と、参加後も関係が続く工夫を考えました。事務局からは、全国の事例を分析した「工夫の切り口例」と「ペルソナ例」が配布され、「子ども連れの人ならどうすれば参加しやすいか」「SNSを見ない人とはどう関係を続けるか」など、具体的な人物像から発想を広げていきました。
ワーク2:いしかわのWa!に掲載する準備を進める
ワーク2では、実施主体、開催場所、調整や巻き込みが必要なステークホルダー、人員体制、予算・資金源、集客方法、そして10月から3月までのスケジュールを書き出しました。個人ワークのあとはグループで共有し、互いの計画に意見や気づきを交わし合いました。

最後は、各テーブルで最も票を集めたプログラムの全体発表です。「プログラム概要」「今日加えた工夫」「今後のスケジュール」を2分半で発表しました。
- 空き家を入口にした地域めぐり:子育て世帯の減少に危機感を抱く地区の企画。当初は子育て世帯に絞っていたものの、これまでの講座を通じて、孫を連れてくる祖父母世代や、別荘的に関わる人、小さな事業を営む人へと間口を広げることに。参加者のニーズを聞いて次の小さなイベントにつなげる循環をつくりたいと話しました
- 棚田のお米でつながるプログラム:棚田の再生に取り組むメンバーによる企画。収穫したお米を「コミュニケーションツール」として、県外からもサポーターを集めたいと語りました
- 小さな学校の学びを支えるプログラム:小規模校の子どもたちの学びの受け皿をつくる企画。オンラインにこだわらず関係者と直接会って話を聞き直すこと、自分がいなくても回る仕組みを時間をかけて育てることなど、講師のアドバイスを取り入れ、全国の小規模校の保護者とのつながりも視野に入れました
- 地域の食を味わい尽くすプログラム:自然の中で子育てしたい都市部の30代子育て世代と、孫に自然体験をさせたい50〜60代という2つの参加者像を設定。繰り返しPRを続け、二拠点生活にもつながる関係を目指します

講師講評:関係人口は、あくまで「手段」
宮野さんは「皆さんの地域への愛とスキル、考え抜く力の高さに刺激を受けた。困ったことがあればいつでも相談してほしい」とエールを送りました。
林さんは「関係人口は目的化されがちだが、あくまで皆さんが地域で実現したいことのための手段。移住はハードルが高いからこそ、通ってくれる人や仲間になってくれる人を増やしていく。要するに、友達を増やしましょう」と締めくくりました。
次回(Day4)に向けて
ここからDay4までは、実践・伴走期間です。事務局へのメール相談(info@kankeijinko.jp)、10月末ごろの進捗確認、11月ごろと1月ごろのオンライン相談会(任意参加)に加え、石川地域づくり協会の「関係人口コーディネーター派遣制度」も活用できます。また、11月29日(日)にはイオンモール白山で「いしかわ地域づくり円陣」も開催予定です。
次回(Day4:2027年2月27日(土)13:00〜16:00)は、最終講座・発表会「実践から学び、次の一歩へ」。会場はコワーキングスクエア金沢香林坊です。受講生一人ひとりが、塾を通して考えてきたことや実践の成果、これからの計画を発表します。
【いしかわ関係人口塾】
■ポータルサイト:いしかわのWa!
■主催:石川地域づくり協会
■運営:一般社団法人日本関係人口協会、株式会社雨風太陽

