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京丹後の海は、なぜ「日本一きれい」なのか? データから見えた海・川・人のつながり

透明な日本海と砂浜が広がる京丹後の海岸をイメージした記事サムネイル

京都府の最北端、日本海に面する京丹後市。2026年、日本関係人口協会が環境省の全国調査をもとに作成した「水がきれいな海水浴場ランキング」で、市内の「小天橋・葛野浜」と「蒲井浜」が全国1位タイになりました。なぜ、京丹後の海はこれほどきれいなのでしょうか。データと地形、流域、地域の取り組みを重ねて見ると、海だけでは説明できない「海・川・人」のつながりが見えてきます。

京丹後の2海水浴場が、全国1位タイ

起点となったのは、環境省「令和8年度 水浴場(開設前)の水質調査」です。全国731か所の水浴場を対象に、2026年4月上旬から6月上旬に地方公共団体が調査を実施しました。

日本関係人口協会は、この公表結果から湖の田沢湖を除いた海水浴場を比較し、「2026年 水がきれいな海水浴場ランキング」を作成しました。COD平均値が0.5mg/L未満だったのは、小天橋・葛野浜、蒲井浜、石川県能登町の五色ケ浜の3地点です。実測値の差は公表されていないため、3地点を同率1位としています。

したがって、この記事でいう「日本一きれい」は、環境省が京丹後の海を公式に日本一と認定したという意味ではありません。環境省の公表データに基づく日本関係人口協会のランキングで、2海水浴場が同率1位になった、という意味です。また、景観、砂浜、設備、生態系などを含む総合評価でもありません。

「きれい」は、何を測っているのか

環境省の水浴場水質調査では、主に次の4項目を確認します。

  • ふん便性大腸菌群数:ふん便由来の汚染をみる衛生指標
  • 油膜の有無:水面に油膜が認められるか
  • COD(化学的酸素要求量):水中の有機物による汚濁の代表的な指標
  • 透明度:水中の見通しの程度

これらを基に「水質AA」「水質A」「水質B」「水質C」「不適」を判定し、水質AAとAを「適」とします。2026年度は全国731か所のうち478か所、約65%が最高区分の水質AAでした。

さらに環境省は、水質AAでCOD平均値が0.5mg/L以下の地点を「水質が特に良好な水浴場」として公表しています。京丹後の2地点は、その中でもCODが0.5mg/L未満でした。ただしCODは有機汚濁の指標であり、海の美しさや生態系、安全性のすべてを単独で表す数値ではありません。

理由① 外洋に開かれた海岸と、海水の交換

京丹後の海を考える第一の背景は、日本海に直接開かれた海岸地形です。京都府の沿岸資料は、丹後沿岸では外洋に面した開放性の海岸と、海水交換が限られる内湾とで水質環境が異なると説明しています。久美浜湾沖や竹野川沖など、外洋側の観測点ではCODの環境基準を満たし、良好な水質環境が保たれてきました。

開放性の高い海域では、閉鎖性の高い湾と比べて海水が入れ替わりやすく、物質が同じ場所に滞留しにくいと考えられます。小天橋・葛野浜や蒲井浜の数値を地形だけで説明することはできませんが、外洋に開かれていることは、水質を支える重要な背景の一つです。

理由② 海だけでなく、川を含む流域の水質

海の水質は、海の中だけで決まりません。山に降った雨は川となり、里や市街地を通って海へ流れ込みます。京都府は、山陰海岸の水質が以前から良好に保たれ、流入する河川も以前より良好になっているとしています。海域のCOD、河川のBODという有機汚濁の代表的な指標は、この10年間おおむね環境基準を達成してきました。

これは、ある一つの川が今回のランキング結果を生んだという意味ではありません。ただ、沿岸だけでなく、山・川・海を一つの流域として見る必要があることを示します。海へ届く水の経路全体が良好であることは、京丹後の海を理解するうえで欠かせない視点です。

理由③ 砂州とリアス海岸を生んだ、山陰海岸ジオパーク

京丹後市は、ユネスコ世界ジオパークに認定された山陰海岸ジオパークの東端にあります。日本海の形成、海面変動、地殻変動、波や河川の働きが、リアス海岸、砂丘、岩礁、入り江など多彩な海岸地形をつくってきました。

小天橋は、河川が運んだ砂などが堆積し、日本海と久美浜湾を隔てるように発達した長い砂州です。一方、丹後半島の沿岸には、入り組んだリアス海岸や岩石海岸、小さな砂浜が連なります。こうした地形は、海の色や透明感、浜ごとの景観を生み出す舞台です。

ただし、「ジオパークだからCODが低い」と単純に結びつけることはできません。地形は海水の動きや流入の仕方に影響する背景であり、今回の水質数値を説明する複数要因の一つとして捉えるのが適切です。

理由④ 海を守る人が、地域の内外にいる

京丹後市では、地域住民による清掃や保全活動に加え、海水浴客も参加できる「ワンハンドビーチクリーン」が市内の海水浴場で行われています。海を訪れた人が、片手で拾える程度の漂着ごみを持ち帰る。小さな行動を、地域と来訪者が一緒に積み重ねる取り組みです。

琴引浜では、地域住民を中心とする「琴引浜の鳴り砂を守る会」が、清掃、流入河川の水質調査や水質浄化、植林、環境学習などを続けてきました。京丹後の海岸保全は、浜だけを掃除する活動にとどまらず、川や後背地、学びまで視野に入れています。

もちろん、海岸清掃がCODの低さを直接生んだと断定することはできません。漂着ごみの回収と水中の有機汚濁は同じものではないからです。それでも、海岸を訪れる人の意識を変え、地域の環境を見守る人を増やすことは、海の価値を将来へつなぐ基盤になります。

「海を訪れる人」から「海を守る人」へ

京丹後の海は、観光資源であると同時に、地域の暮らしと仕事を支える自然資本です。透明な水や長い砂浜にひかれて訪れた人が、ビーチクリーンに参加し、地形や流域を学び、季節を変えて再訪する。やがて知人に魅力を伝えたり、保全活動を応援したりする。そこに、観光客から一歩進んだ関係人口の入口があります。

自然資本が人を呼び、人との関係が自然を守る力になる。その循環は、海の美しさを消費する観光ではなく、訪れる人と地域が一緒に価値を育てる観光へつながります。

京丹後の海がきれいな理由は、一つではない

京丹後の2海水浴場がランキング同率1位になった背景を、単一の理由で説明することはできません。外洋に開かれた海岸、良好な河川と海域の水質、山陰海岸ジオパークの多彩な地形、そして海を見守り続ける地域の人々。これらが長い時間の中で重なっています。

今回のデータは、一時点の開設前調査です。年度や天候、採水条件によって結果は変わり得ます。それでも、全国共通の調査で確認された数値は、京丹後の海を「きれい」で終わらせず、その理由と守り方を考える入口になります。

京丹後と関わる入口

  • 小天橋・葛野浜、蒲井浜を訪れ、水の透明度と海岸地形を自分の目で確かめる
  • ワンハンドビーチクリーンに参加し、「訪れる人」から「守る人」へ一歩進む
  • 山陰海岸ジオパークのガイドやトレイルで、砂州・リアス海岸・岩礁を学ぶ
  • 川から海までのつながりを意識し、地域の環境保全活動を応援する

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参考資料

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