たとえば避難所の受付に人が集まったとき、通信がつながらなければ、誰が来てどこへ移ったかをどう記録するでしょうか。カードを持っている人でも、その種類は一つではありません。受付の速さだけでなく、通信がない場面や指定避難所以外にも目を向けた実証が行われました。自分の地域の受付手順は、こうした状況にどこまで備えているでしょうか。
要点3つ
- デジタル庁は2026年11月4日、三重県名張市の協力を得て行った「マイナンバーカード等を活用した避難者受付アプリ」の自治体実証資料を掲載しました。発災直後に展開できる受付機能に焦点を当てています。
- 資料では、アプリやシステムを導入していない自治体、通信がない場所、指定避難所以外での入退所受付を想定しています。これは自治体支援ツールとして準備するための実証で、全国で運用が始まったという発表ではありません。
- 実証資料に示された受付手段は、実物のマイナンバーカード、iPhoneのマイナンバーカード、運転免許証、受付用ICカード。避難所側の端末にはAndroidタブレットが示されています。
概要――通信とカードの種類を前提にしない受付へ
デジタル庁の説明によると、2025年度は、アプリやシステムを導入していない自治体が被災した場合にも初動対応に使える、避難所等の受付に特化したアプリを検討しました。三重県名張市の協力のもとで実証を行い、その資料を11月4日に掲載しています。資料には、市職員や地域住民などが参加したこと、避難所側の受付用端末にAndroidタブレット、市・県の災害対策本部側に情報参照用のPCを想定したことが記されています。
注目したいのは、通信がない場所でも使えることと、指定避難所以外でも入退所を受け付けられることを、準備するツールの条件に置いている点です。カードもマイナンバーカードだけに限らず、運転免許証や受付用ICカードなどを挙げています。実証資料の図には入所・退所の受付と、入所時に補足情報(要配慮情報)を入力する流れが示されています。
ただし、資料は受付アプリの構成や実証の概要を示すもので、全国配備の時期、処理時間の短縮率、実災害での運用実績を示していません。通信が切れたときの同期手順や、カードを使えない人への受付方法も、各自治体が運用を考える際に別途確かめたい論点です。実証を、すでに全国で使えるサービスと読み違えないようにしたいところです。
地方創生への意味――避難者を把握できる入口を増やす
ここからは協会の解釈です。災害時には、住民が指定避難所以外へ移る場合も考えられます。自治体にとって受付情報は、必要な支援を届けるための出発点です。住民には受付方法の分かりやすさ、自治体には停電・通信障害時の運用と個人情報の管理、地域の支援団体や事業者には受付場所と相談先の共有が関わります。端末を導入するだけでなく、紙や対面の受付を含む複数の経路をどうつなぐかが実務上の課題です。
自分の地域に置き換えると
たとえば、通信が途絶えた想定で避難所訓練をするなら、受付場所、手元で使える端末と電源、カードを持たない人の記録方法、本部へ情報を渡す担当を一つずつ確認します。これは仮の点検例で、今回のアプリにすべての手順が実装済みと示すものではありません。自分の自治体の防災担当に、現行の避難者受付計画と、指定避難所以外の記録方法を確認できます。
自治体・地域事業者が確認したい行動
- 受付経路を棚卸しする:自治体の防災・情報システム担当は、指定避難所とそれ以外の場所を分け、各所の受付手段、電源、通信、使用できるカード、紙の代替手順を一覧にする。
- 通信断を試す:訓練担当はインターネットを使えない条件で受付から本部への情報共有までを通し、受付に要した時間、未記録件数、後での入力・照合に必要な手間を記録する。今回の資料だけで実運用性能を推定しない。
- 要配慮情報を扱う人を決める:自治体と避難所運営者は、入所時に必要な情報の範囲、閲覧権限、保管・引継ぎの手順を確認する。地域の支援団体にも必要な連絡経路だけを共有する。
- カードがない場合も案内する:自治体担当は、カードを使えない人の受付方法と相談先を現行計画で確かめ、住民向け訓練に明記する。
一次資料
デジタル庁「デジタル技術を活用した災害への対応」/「マイナンバーカードを活用した避難者受付アプリに関する自治体実証」(PDF)
資料掲載日:2026年11月4日
発表主体:デジタル庁

