イチゴの受粉と田んぼの草取り、機械が支える日へ―農水省が2計画を認定

右側に抽象的なイチゴと水田、風と水面の線を重ねたスマート農業のコンセプトビジュアル。実在の圃場や開発中の機械を再現した画像ではありません

たとえば、イチゴの花に風を届ける作業と、田んぼの雑草を取る作業。作物も場所も違いますが、どちらも日々の手間をどう支えるかが問われます。農林水産省は、この二つの作業に向けた技術の開発・供給計画を新たに認定しました。自分の地域の農作業では、どこに人の時間が集中しているでしょうか。

目次

要点3つ

  • 農林水産省は2026年11月6日、スマート農業技術活用促進法に基づき、2事業者の開発供給実施計画を新規認定しました。別に、既認定の1事業者の計画変更も認定しています。新規認定は技術の開発・普及に関する計画で、全国の農家で導入済みという発表ではありません。
  • 一つは施設イチゴの自動送風受粉システム。施設内を自律走行し、受粉に適した風向と風速を保つ技術をREACT株式会社が開発・供給する計画です。もう一つは有機栽培の水田で「みちびき」を使って自走し、ブラシで雑草を除く装置を株式会社ハタケホットケが開発・供給する計画です。
  • 国の資料には、イチゴは付加価値額30%向上、水田除草は労働時間80%削減に資する技術と記されています。これは認定の対象となる技術区分・計画上の効果の説明であり、両社の製品が現場で一律にその成果を達成した実績ではありません。

概要――花に届く風と、水田を走るブラシ

農林水産省は、農業で必要性の高いスマート農業技術の開発と成果の普及に関する計画を認定しています。認定を受けた事業者は、金融・税制などの支援措置を受けられます。今回の新規分は2件で、既認定計画の変更1件とは分けて数える必要があります。

施設イチゴ向けの計画は、施設内で自律走行しながら、受粉に適した風向・風速を保つ自動送風受粉システムです。添付資料では計画の実施期間を5年間としています。有機水稲向けの計画は、準天頂衛星システム「みちびき」を使った自動運転制御で水田内を走り、ブラシで土面をかき混ぜて雑草を除く装置です。こちらの計画期間は3年間です。作業を省力化する技術という共通点があっても、対象の作物、作業環境、必要な運用は異なります。

30%と80%という数字も、そのまま導入後の効果として読まないようにしたいところです。国の発表は、それぞれ「付加価値額30%向上に資する技術」「労働時間80%削減に資する技術」と記しています。実際の効果は圃場の条件、作業工程、費用、使い方を含めて検証する必要があり、現時点の発表は製品価格、地域ごとの導入時期、各農家の達成値を示していません。

地方創生への意味――人手の不足を作業単位で考える

ここからは協会の解釈です。地域の農業を続けるには、「農業全体を自動化する」という大きな話だけでは足りません。受粉や除草のように時間のかかる作業を切り分け、技術が支えられる部分と人の判断が残る部分を見極めることが重要です。農家には労働時間と品質の両立、自治体や普及指導員には地域の作型との適合、地域の農機・サービス事業者には保守や共同利用の仕組みが関わります。技術が広まれば地域の農業を支える可能性がありますが、今回の認定だけで担い手不足が解消したとは言えません。

自分の地域に置き換えると

たとえばイチゴ農家が受粉作業を、また有機米の生産者が除草作業を見直すなら、まず作業日数と1回あたりの時間、作業する面積や施設の通路幅を記録します。これは仮の点検例で、今回の装置がすべての圃場に適合するという意味ではありません。地域の農業改良普及センターやJA、事業者に、実証できる条件と導入後の管理方法を確認できます。

自治体・地域事業者が確認したい行動

  • 作業の基準値を残す:農家と普及指導員は、受粉・除草にかかる年間の回数、面積、延べ労働時間、収量・品質の現状を記録し、試験導入前後を同じ条件で比べられるようにする。
  • 圃場条件を照合する:施設イチゴでは通路幅、栽培棚、風の当たり方を、水田では区画形状、水深、通信・測位の状況を事業者に伝え、実証に必要な条件を確認する。
  • 実績と計画の数字を分ける:自治体やJAが技術を紹介するときは、国の30%・80%を農家の達成実績として使わず、地域での試験結果、費用、機械の停止時に必要な人手を別に示す。
  • 共同利用を検討する:複数の生産者で使う場合は、稼働時期の重なり、移動・保守の担当、費用分担を先に決め、地域事業者の支援体制を確認する。

一次資料

農林水産省「開発供給実施計画を認定しました」/施設イチゴ向け計画の概要(PDF)/水田除草向け計画の概要(PDF)
発表日:2026年11月6日
発表主体:農林水産省

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