住まいを地域の居場所へ―国が8つのモデル事業を選定

薄紫と淡い緑の抽象的な扉が奥へ連なり、住まいから地域の居場所へ開く可能性を描いたコンセプトビジュアル。実在の場所・建物・事業を表す写真ではありません

家を探すとき、部屋の広さや家賃だけでは決められないことがあります。相談できる人が近くにいるか、外へ出たときに過ごせる場所があるか、災害後に住まいをどう立て直せるか。国が選んだ8つの住まいづくりの提案は、そうした「住んだ後」の支え方にも目を向けています。自分の地域では、住まいと居場所を一緒に考えられているでしょうか。

目次

要点3つ

  • 国土交通省は2026年11月6日、「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」の令和8年度第2回選定結果として、8事業を公表しました。対象は高齢者、障害者、子育て世帯などの変化する居住ニーズに応える先導的な提案です。
  • 8件には、空き家と福祉の仕事を結ぶ三重県四日市市の提案、廃校を住まい・交流・仕事の拠点にする栃木県那須塩原市の提案、既存市営住宅に居住支援と相談の場を組み合わせる京都市の提案などがあります。いずれも選定された提案で、完成・運営開始を知らせる発表ではありません。
  • 4件が「課題設定型」、4件が事業を具体化するための「事業育成型」で、今回「事業者提案型」の選定はありません。事業育成型には、香川県三豊市の多世代の見守りを検証する構想や、熊本県八代市を候補地とする被災者の住まい再建支援モデルも含まれます。

概要――住宅の中身だけでなく、暮らし方を組み立てる

今回の8件は、民間事業者などが提案し、評価委員会が先導性を認めたモデル事業です。公表資料には各事業の予定地、提案者、構想と評価が載っています。課題設定型4件は四日市市、那須塩原市、北九州市、京都市。事業育成型4件は横浜市、三豊市、熊本県八代市(候補地)、田辺市です。「選定」は実施に向けた支援の対象になったという段階で、入居募集や施設の開設を意味しません。

提案の共通点は、既存の建物と住む人への支援を重ねていることです。四日市市の提案は空き家を使い、住まいの確保が難しい人への居住支援と福祉人材育成を組み合わせます。那須塩原市では廃校を改修し、住まいのほか交流や就労支援の場を設ける構想です。京都市の提案は市営住宅の空き住戸4戸と共用住戸1戸を活用し、ICTによる安否確認と月1回の対面相談を組み合わせる計画です。これらは公表された提案内容であり、実施後の効果ではありません。

事業育成型は、実施に先立つ検証や計画づくりの段階です。三豊市では既存建物を生かした三世代の見守り拠点について、利用ニーズや運営体制、収支を調べる計画です。八代市を候補地とする提案は、災害で住宅被害を受けた人に法律・建築・福祉の専門家が一体で関わり、修繕、解体、転居の判断を支える仕組みを検証します。評価資料には、事業の自走や運営体制、支援と住環境の両立など、実施に向けた課題も記されています。

地方創生への意味――「住める」を「住み続けられる」へ

ここからは協会の解釈です。移住・定住を住宅の戸数だけで測ると、住み始めた後の孤立、仕事、子育て、災害からの再建といった課題を見落としかねません。今回の提案は、住まいの確保と相談・交流・就労の機能を組み合わせる視点を示しています。住民にとっては支援へのつながり、自治体にとっては空き家や公営住宅など既存ストックの使い方、地域事業者にとっては福祉・不動産・まちづくりの役割分担が論点になります。ただし選定された事業が各地の課題を解決したという実績は、現時点の資料には示されていません。

自分の地域に置き換えると

たとえば、空き家を活用した居住支援を考える自治体なら、空き家の数だけでなく、入居後に相談や見守りを担える団体と、その対象者のニーズを調べる必要があります。これは仮の検討手順で、どの地域でも今回のモデルをそのまま移せるという意味ではありません。自地域の住生活・福祉担当、居住支援法人、不動産事業者が、どの支援を誰が担うかを一枚の図にすると、住宅整備だけでは埋まらない部分が見えてきます。

自治体・地域事業者が確認したい行動

  • 住まいと支援を別々に数える:自治体の住宅・福祉担当は、空き家や公営住宅の活用可能戸数と、入居相談・見守り・就労支援に対応できる団体数を確認する。戸数だけで支援体制を評価しない。
  • 8件の型と段階を見分ける:地域事業者は別紙の提案概要・評価概要を読み、課題設定型と事業育成型、計画段階と整備段階を区別して、自地域に似た課題と異なる条件を一覧にする。
  • 利用者の選択を確認する:居住支援法人と自治体は、対象者がどの住宅・支援を選べるか、プライバシーや相談の窓口、対面支援の頻度を運営計画で確かめる。評価資料にある権利や運営体制への指摘も参照する。
  • 成果の数字を先に決める:事業化を検討する主体は、入居までの日数、入居後の相談利用、継続居住、空き住戸の活用、運営費を検証項目として決め、事業開始後の実績と比較する。選定件数の8を成果指標として扱わない。

一次資料

国土交通省「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」令和8年度第2回選定結果/報道発表資料(PDF)/8事業の提案・評価概要(PDF)
発表日:2026年11月6日
発表主体:国土交通省

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