たとえば、地域で開いた会議が終わり、参加者が帰った後。会場の外で生まれた出会いや、地元の仕事との接点は残るでしょうか。観光庁は、地域の強みを生かした会議・イベント等の開催モデルをつくる事業で、富山県の企画を新たに選びました。自分の地域なら、集まる人を迎えるだけでなく、何を次につなげたいでしょうか。
要点3つ
- 観光庁は2026年10月29日、令和8年度「地域のMICE誘致力強化促進事業」の二次採択結果として、富山県の事業を公表しました。
- 採択された事業名は「富山ウェルビーイング・リトリートプログラム創出事業(Toyama Wellbeing Retreat)」です。公式発表に記載された申請主団体は富山県、代表組織は県の観光振興局です。
- この事業の狙いは、地域の強みや中長期戦略を踏まえた開催モデルをつくり、実証後に他地域でも参考にできるよう取組を広げることです。今回は選定の発表で、開催実績や地域経済への効果を示したものではありません。
概要――「会議を呼ぶ」だけでは終わらせない
MICEは企業の会合や報奨旅行、国際会議、展示会などをまとめて指す言葉です。観光庁の今回の事業は、国内の地域がMICEの開催地として持つ可能性を高めるため、地域の強みを生かした質の高い開催モデルを生み出すことを目指しています。二次採択の発表では、富山県の「富山ウェルビーイング・リトリートプログラム創出事業」が選定されています。
大切なのは、発表に書かれていることと、まだ書かれていないことを分けることです。県の事業名と選定は確認できますが、具体的な開催日、参加者数、訪問先、支出額、地域への波及効果はこの発表では示されていません。名称から実施内容を推測して、特定の施設や体験が決まったように受け止めるべきではありません。
地方創生への意味――会場の外にも仕事はある
ここからは協会の解釈です。地域にとってMICEの価値は、会場を満たすことだけで決まりません。宿泊、移動、食、案内などを担う地域事業者と、会議後も続く関係をどうつくるかが問われます。自治体には開催モデルと中長期戦略の整合、事業者には参加できる役割や必要な準備の見極め、住民には日常の混雑や地域資源の使い方との折り合いが関わります。ただし今回の採択だけで、こうした効果が富山県で生じたと断定はできません。
自分の地域に置き換えると
たとえば、自治体や観光団体が会議の誘致を考えるなら、開催予定の規模だけでなく、地域内で受けられる宿泊人数、移動手段の本数、地元事業者の受注余地を並べてみることができます。これは検討のための仮の例で、富山県の採択事業がこの形で実施されるという情報ではありません。「来てもらう」から「地域に残る関係をつくる」へ、何を測ればよいかを話し合う出発点になります。
自治体・地域事業者が確認したい行動
- 公式情報の範囲を確認する:自治体の観光・MICE担当は、観光庁の採択ページと県の今後の公式発表を分けて記録し、開催日や会場など未公表の事項を決定事項として案内しない。
- 受入れの数字をそろえる:観光団体と宿泊・交通事業者は、想定する時期の客室数、交通便数、会場から周辺地域への移動時間を同じ条件で確認する。足りない部分と担当者を一覧にする。
- 地域に残るものを決める:自治体と地域事業者は、地元調達先、参加事業者数、会期外の再訪や継続的な商談など、事業の目的に沿う指標を事前に選び、実施後に初めて実績を測る。
- 他地域に移せる条件を残す:事業に関わる団体は、かかった費用、必要な人員、調整に要した期間、参加者・住民からの意見を記録し、観光庁が目指す横展開に使えるよう整理する。
一次資料
観光庁「令和8年度『地域のMICE誘致力強化促進事業』二次採択結果のお知らせ」
公表日:2026年10月29日
発表主体:観光庁

