郷土の食は旅の目的になるか―宗像市・臼杵市を農水省が支援

架空の器と食を旅先の風景に重ねたコンセプトビジュアル。実在する宗像市・臼杵市の料理、景色、事業を描いたものではありません

たとえば、旅先で何を食べるかを考えたとき、料理の名前だけでなく、その土地で受け継がれてきた作り方や食べる場にも関心が向くかもしれません。食を訪問のきっかけにするには、地域の日常をどう伝え、誰が受け入れを支えるのでしょうか。自分の地域にも、旅人に伝えたい食文化と、それを続ける人たちの仕事はあるでしょうか。

目次

要点3つ

  • 農林水産省は2026年10月30日、食に特化した地域づくりを進める「インバウンド拡大チーム」の支援対象として、福岡県宗像市と大分県臼杵市を選びました。
  • 宗像市は酒・味噌などの伝統食と地魚茶漬などの郷土料理、臼杵市は醤油・味噌・日本酒・焼酎などの伝統食と本膳料理などの郷土料理を、各市の構想に結びつけています。発表に載るのは両市の取り組みの方向性で、来訪者数の増加実績ではありません。
  • 農水省は、所属部署や役職を問わず募った職員による伴走支援を行うとしています。同時に選定された外食事業者15社は別の「海外展開拡大チーム」の対象であり、地方公共団体の採択数とは分けて読む必要があります。

概要――食を「名物」だけで終わらせない支援

農水省の発表は、食文化を軸に海外からの来訪を広げようとする地方公共団体を支えるものです。支援対象は宗像市と臼杵市の2市。農水省職員が各チームの業務に加わり、対象の事業者・地域に伴走する方針が示されました。発表に事業費、来訪者数の目標値、支援期間の詳細は示されていません。

宗像市は「世界遺産と食文化」を掲げ、酒・味噌などの伝統食に加え、地魚茶漬、とうへい鍋、とりすき、おきゅうと、のうさばを郷土料理として挙げています。臼杵市はユネスコ食文化創造都市を手がかりに、醤油・味噌・日本酒・焼酎などの伝統食、本膳料理、茶台寿司、黄飯などを示しています。いずれも発表資料に記された食文化の例で、掲載した料理がすでに旅行商品として提供されているという意味ではありません。

同じ発表では、外食事業者15社も海外店舗の拡大に向けた別チームの支援対象になりました。こちらは日本の外食や食品の海外展開が主題です。地域に人を迎える2市への支援とは目的と対象が異なります。

地方創生への意味――食べる一回と、続く地域の仕事

ここからは協会の解釈です。食を旅の目的にするなら、料理を紹介するだけでなく、材料をつくる人、調理する人、食べる場をつくる人、文化を伝える人へ、来訪の価値がどう届くかを考える必要があります。住民には日常の食文化が無理なく続くか、自治体には観光・農林水産・文化の担当をどうつなぐか、地域事業者には受け入れと収益が見合うかが関わります。ただし、今回の選定だけで観光消費や雇用が増えたとは言えません。

自分の地域に置き換えると

たとえば、地域に伝わる食を紹介したいなら、まず「誰が、いつ、どこで、どの量を提供できるか」を確認できます。これは仮の検討例で、宗像市や臼杵市の提供体制を示したものではありません。自治体の観光担当だけでなく、食文化・農林水産の担当、飲食店や生産者に、公開できる料理の由来、季節性、予約の要否、継続の負担を聞くと、宣伝と実際の受け入れの差が見えます。

自治体・地域事業者が確認したい行動

  • 食文化の棚卸し:自治体の観光・文化・農林水産担当は、料理や製法ごとに由来を確認できる資料、継承者、提供事業者、提供可能な季節・日数を一覧にする。名前だけを先に広告しない。
  • 受け入れ条件の確認:飲食・宿泊事業者は、提供できる食数、予約締切、原材料の調達先、アレルギーや多言語案内への対応を確認し、公開情報を実際の体制に合わせる。
  • 測る数字の設定:自治体と事業者は、食を目的にした問い合わせ件数、予約・利用件数、地域内の仕入れ額、継続して提供できた日数など、数えられる指標を先に決める。変化があっても今回の支援だけの効果と即断しない。
  • 支援内容の確認:両市の事業者や関係団体は、農水省と各市の公式案内で今後の具体的な支援内容・参加方法を確認する。今回の発表だけで新しい補助金や公募の開始を前提にしない。

一次資料

農林水産省「食文化の海外展開・インバウンド拡大に取り組む外食事業者及び地方公共団体の支援対象を決定しました」
発表日:2026年10月30日
発表主体:農林水産省

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