たとえば、湿地の見回りや里山の手入れを続けるには、土地を知る人だけでなく、調整を引き受ける人も必要です。活動を担う団体が変わっても、守る場所と役割を地域で共有できるでしょうか。新たに認定された自然共生サイトには、市町村が複数の主体をつなぐ計画も含まれます。自分の地域の自然では、誰がどの作業を続けているでしょうか。
要点3つ
- 環境省・農林水産省・国土交通省は2026年10月30日、地域生物多様性増進法に基づく令和8年度第2回認定として、122か所を自然共生サイトに認定したと発表しました。
- 内訳は、企業やNPO等が作成・実施する「増進活動実施計画」116か所と、市町村が取りまとめ役となって地域の多様な主体と連携する「連携増進活動実施計画」6か所です。農林水産業・農山漁村関係の計画は、両類型を含む122か所のうち97か所です。
- 市町村が申請者となる6計画の一覧には、札幌市の「ペケレット及び周辺湿地」、豊岡市の「コウノトリ育む中筋の里地里山」、北九州市の「曽根干潟」などが載っています。認定は活動計画とその実施区域に関するもので、生態系がすでに回復したという実績の発表ではありません。
概要――122のうち、市町村がつなぐ計画は6つ
自然共生サイトは、地域で生物多様性を増進する活動の計画が認定された区域です。2025年4月に施行された法律の下で、企業やNPO等が主体となる計画と、市町村が取りまとめ役になり地域の複数主体と進める計画が認定対象になっています。今回の122か所は、この制度の令和8年度第2回分です。
6つの連携計画の一覧には、札幌市、磐梯町、印西市、厚木市、豊岡市、北九州市が申請者として記されています。対象は湿地、ビオトープ、公園の水辺、大学の敷地、里地里山、干潟とさまざまです。一覧には連携活動実施者も記されており、市町村だけで作業する制度ではないことが分かります。地域ごとの活動内容や範囲は、各計画の公式資料で確認する必要があります。
農水省の発表によると、今回の122か所のうち97か所は農林水産業・農山漁村関係です。令和8年度第1回までの423か所に今回分を加え、同法に基づく認定は累計545か所となりました。この545は今回までの法律に基づく認定件数であり、従前の別制度を含む自然共生サイト全体の件数と混同しないようにしたいところです。
地方創生への意味――保全を「誰かの善意」だけにしない
ここからは協会の解釈です。里山や湿地の維持は、住民の暮らしや地域の農林水産業とも接する長期の仕事です。市町村が取りまとめ役となる形は、土地の利用者、活動団体、学校、事業者などの役割を見える形にする手がかりになります。自治体には調整と記録、地域事業者には継続して協力できる作業や資源、住民には活動に関わる入口が論点です。ただし、認定された事実だけで担い手不足の解消や観光・経済効果が生じたとは言えません。
自分の地域に置き換えると
たとえば、手入れが必要な水辺や里山がある地域なら、最初に区域の所有・管理者、いま行われている作業、実施回数、参加団体、費用と安全上の注意を確認できます。これは仮の検討例で、今回の認定区域の活動実績を示すものではありません。自治体の環境・農林水産担当と、現場の団体が同じ地図と作業記録を見られるかを確かめることから始められます。
自治体・地域事業者が確認したい行動
- 対象区域と担い手を確認する:自治体の環境・農林水産担当は、公式の認定一覧で区域と申請者、連携活動実施者を確認し、現場の所有者・管理者と役割が一致するか整理する。
- 作業を続けられるか測る:活動団体と自治体は、年ごとの作業回数、参加人数、必要経費、観察・調査の記録を同じ方法で残す。数の増減だけで生態系の改善を断定しない。
- 地域の参加を設計する:学校や事業者が関わる場合は、立ち入り範囲、安全管理、道具や資金の分担、活動の連絡窓口を確認する。認定だけで自由な利用や観光開放が認められると考えない。
- 制度と成果を分けて発信する:自治体・地域事業者は、認定日と計画の主体を明記し、保全成果は今後の調査結果に基づいて伝える。国の一覧にない効果を宣伝文句にしない。
一次資料
農林水産省「地域生物多様性増進法に基づく『自然共生サイト』の認定(令和8年度第2回)について」
農林水産省「連携増進活動実施計画 令和8年度第2回認定一覧」
発表日:2026年10月30日
発表主体:環境省・農林水産省・国土交通省

