たとえば、近所の公園が新しくなっても、数年後に手入れが続かなければ、足を運ぶ理由は薄れてしまうかもしれません。建物を建てることと、そこを地域の居場所に育てることは別の仕事です。今年の都市景観大賞に選ばれた二つの場所は、その違いを考える手がかりになります。あなたの地域の風景は、誰が育て続けているでしょうか。
要点3つ
- 国土交通省は2026年10月23日、今年度の都市景観大賞(国土交通大臣賞)の表彰式を29日に開くと発表しました。受賞地区・活動の選定自体は10月5日に公表済みです。
- 都市空間部門の大賞は長野市の「長野県立美術館・長野市城山公園周辺地区」。美術館の建て替えを機に、公園や善光寺周辺とのつながりを考え、県民参加の検討や歩行空間の整備を重ねた事例です。
- 景観まちづくり活動・学習部門の大賞は鹿児島県南九州市の「bandpark 番所鼻自然公園リ・デザイン」。住民有志の発意から、公園の再生、運営、収益の一部を管理費へ戻す仕組みを組み合わせました。
概要――二つの「景観」は、形だけではない
長野の事例では、老朽化した県立美術館の再整備を、美術館の敷地内だけで完結させませんでした。国交省の受賞資料によると、県民リレー・ワークショップなどで計画を深め、城山公園と一体で整備。展示室以外の共用部を無料で使える空間とし、周辺の歩道や交差点も見直しました。審査講評は、公共施設の建て替えと地域の風景をつなぐ好例として評価しています。
一方、南九州の事例は、放置されていた旧施設の撤去をきっかけに、住民有志が自然景観の価値を見直した取り組みです。国交省の受賞資料は、跡地での社会実験、住民参加の検討、公設民営の観光拠点づくりを経て、得た収益の5%を公園管理費に還元する仕組みを紹介しています。同資料では公園来訪者数を2010年の1.5万人から2024年の20万人と記載していますが、この数字だけで他地域でも同じ成果が得られるとは言えません。
地方創生への意味――完成後の関係を設計する
ここからは協会の解釈です。二つの受賞例に共通するのは、見栄えのよい空間をつくるだけでなく、使う人、関わる人、維持する人を計画に含めていることです。長野では県民の意見と周辺へのつながり、南九州では住民発の活動と運営費の循環が、その違いを示しています。住民には日常の居場所として、自治体には公共施設と周辺を一体で考える課題として、事業者には運営に関わる機会として関係します。ただし、受賞は特定の整備手法や収益モデルを全国一律に推奨するものではありません。
自分の地域に置き換えると
たとえば地域の公園や文化施設を更新するなら、開館日の姿だけでなく、5年後の平日を思い浮かべてみます。誰が気軽に立ち寄れるか。隣の商店街や学校へ歩いて行きやすいか。草木、設備、催しの管理費はどこから出すか。長野と南九州では答えが異なります。地域の規模や使い方に合う仕組みを、自分たちで確かめることが大切です。
自治体・地域事業者が確認したい行動
- 施設の外を歩く:公園・文化・道路・観光の担当者が、入口から周辺の駅、学校、商店までの徒歩経路、段差、滞留できる場所を地図に書き出す。
- 使い手を聞く:住民、近隣の事業者、子育て世帯などに、使う時間帯と使いにくさを尋ね、設計や運営の検討記録に残す。
- 維持費を見積もる:管理者と運営事業者が、清掃・植栽・設備更新の年間費用、担い手、財源を区分する。収益を充てる場合は割合と使途を協定で明確にする。
- 完成後も測る:単なる来訪者数だけでなく、地元利用、滞在、管理費、参加者の継続を年ごとに確認し、必要なら運営を見直す。
一次資料
国土交通省「令和8年度『都市景観大賞』の表彰式を行います」
都市景観大賞の各賞選定(2026年10月5日)
受賞地区・活動の詳細と審査講評(PDF)
発表日:2026年10月23日(表彰式発表)/2026年10月5日(受賞選定)
発表主体:国土交通省

