田畑で使う肥料の原料は、遠い国から届くものだけではありません。街の下水処理で生じる資源にも、植物の生育に必要なリンや窒素が含まれています。ただし、資源があることと、安全性や品質を確かめて地域で利用できることは別の話です。あなたの地域では、下水の先にある資源をどう扱っているでしょうか。
要点3つ
- 国土交通省は2026年10月22日、地方公共団体の下水汚泥資源の肥料利用と検討状況を比較できるダッシュボードを公開しました。
- 「実際に肥料として利用された割合」と「肥料化に向けた検討の進み具合」を別々に示します。利用率が高くても検討進捗率が高いとは限らず、単純な順位表として読むべきではありません。
- 全国・都道府県、地方公共団体、下水処理場の3つの視点で確認できます。利用にはExcel 2021以降またはMicrosoft 365が必要です。
概要――「使っているか」と「考えているか」は違う
肥料の原料は海外への依存が大きく、国土交通省は下水汚泥に含まれるリンや窒素に注目しています。国は2030年までに下水汚泥資源の肥料としての使用量を倍増する目標を掲げ、自治体に肥料利用を優先して検討するよう促してきました。今回の発表は、その取り組みを全国の自治体で見渡せるようにしたものです。新たな肥料の販売開始や、個別地域での利用決定を発表したものではありません。
ダッシュボードには、発生した下水汚泥の乾燥重量に対し肥料として利用した割合を示す「下水汚泥肥料利用率」と、肥料化をめぐる検討の進み具合を示す「肥料利用化検討進捗率」があります。国土交通省は、すでに外部委託で肥料化が進んだ団体では検討の指標が必ずしも高くなく、逆に大規模な処理場を抱える団体では検討が進んでも需要との釣り合いから利用率が低い傾向があると説明しています。数字一つで地域の努力や成果を決めつけられない点が、この資料の読みどころです。
地方創生への意味――自分の地域に置き換えると
ここからは協会の解釈です。下水処理は住民の暮らしを支える一方、肥料の利用先は農業や緑地管理の現場にあります。両者をつなぐには、資源量だけでなく、安全性・品質、運搬、需要、費用、受け手の理解を同じ地域の課題として考える必要があります。自治体の下水道部局と農政部局、農業者や肥料事業者が、共通の数字から話し始められる点に今回の公開の価値があります。ただし、ダッシュボードだけで製品の適合性や事業採算が証明されるわけではありません。
たとえば自分の市町村の利用率が低かったとしても、すぐに「遅れている」とは言えません。処理場の規模、汚泥の処理方法、近隣で必要とされる肥料の量、既存の委託先を確認して初めて、次の一手が見えてきます。逆に利用率が高い地域でも、農業者が求める成分や品質を継続的に満たせているかは別に確かめる必要があります。
自治体・地域事業者が確認したい行動
- まず数字を分けて見る:自治体の下水道担当は「団体DB」と「処理場DB」で自地域の肥料利用率と検討進捗率を別々に確認し、似た規模の団体と比較する。
- 利用先を確かめる:農政担当と農業者・肥料事業者は、地域で必要な肥料の種類、年間の需要量、供給・運搬できる範囲を照らし合わせる。現時点の利用率だけから需要があると推測しない。
- 安全性と費用を確認する:下水道担当と受入先は、肥料成分と重金属等の分析、品質管理、製造・運搬費用、必要な制度上の手続きを個別に調べる。
- ツールの条件を確認する:国土交通省の公式ページからファイルを取得し、Excel 2021以降またはMicrosoft 365で開く。散布図に団体名が直接表示されないなどの注意事項も併せて読む。
一次資料
国土交通省 報道発表「下水汚泥資源の肥料利用・検討状況見える化ダッシュボードを公開」
国土交通省 ダッシュボードと操作・利用上の注意点
発表日:2026年10月22日
発表主体:国土交通省

