たとえば、進学や就職で町を離れたあとも、学生時代に始めた地域活動を支えられたら。あるいは、住まいを移さずに通いながら地域の仕事に関わる道があったら。住民票があるかどうかだけで、地域の担い手を数えられるでしょうか。
要点3つ
- 国土交通省は2026年10月27日、令和8年度「地域づくり表彰」の受賞団体を発表しました。54団体の推薦から9団体を表彰し、千葉県市原市、三重県南伊勢町、長崎県佐世保市の3事例が国土交通大臣賞に選ばれました。
- 南伊勢町二地域居住推進チームは、空き家を再生した「うみべのいえ」などを拠点に、地域外の人が漁業、観光、創業、地域活動へ関わる複数の入口を設けています。審査資料は、二地域居住を単なる移住の前段階ではなく、担い手づくりの仕組みと評価しています。
- 市原市の「ウエルコミ」はドラッグストアの遊休スペースを市・企業・NPOが協働で運営。佐世保市の「Sasebo Change」は高校生発の活動を卒業生がオンラインや帰省時にも支えています。いずれも今回の受賞が全国での効果を保証するものではありません。
概要――「参加できる場所」と「関わり続ける仕組み」
国交省の発表は、地域づくりの優良な取り組みを表彰するものです。添付された審査資料には、受賞した3事例の活動内容と選定理由が示されています。制度の新設や3地域への一律の補助金交付を知らせる発表ではありません。
南伊勢町では、空き家を活用した「うみべのいえ」を入口に、キッチンやリビングなどの機能を町の中に分散させ、地域外の人との継続的な関係を育てています。移住者支援の地域法人、漁業人材育成団体、関係人口のコミュニティ、行政が連携し、定住だけを唯一の到達点にしていません。審査資料は、ふるさとワーキングホリデー参加者の再訪や漁業研修後の就業、空き家を使った事業創出を成果として挙げています。
市原市の「ウエルコミ」は、買い物に立ち寄るドラッグストアの空きスペースを地域交流拠点に転じた事例です。市民活動支援センターの廃止で失われた仲介機能を、市・企業・NPOの協働で再構築しました。場所を貸すだけでなく、住民の活動と企業・行政などをつなぐ中間支援の役割が評価されています。
佐世保市の「Sasebo Change」は、学校を横断する高校生有志の活動から始まりました。地元鉄道を盛り上げる企画や多世代交流などを重ね、卒業後もOB・OGがオンラインや帰省時に後輩の活動を支えています。審査資料は、活動を一過性のイベントで終わらせず、次世代へ引き継ぐ仕組みを評価しています。
地方創生への意味――移住の人数だけでは見えない力
ここからは協会の解釈です。3事例は、地域を支える人が「移り住んだ人」に限られないことを示しています。住民には日常の店や活動を通じた参加の場、自治体には地域外の人や若者との関係を続ける役割、地域事業者には空きスペースや仕事を生かした接点づくりが見えてきます。大切なのは参加者数を一度増やすことだけではなく、誰が誘い、次に何を任せ、離れたあともどう関われるかという設計でしょう。ただし、3事例の方法がそのまま他地域で機能するとは限りません。
自分の地域に置き換えると
たとえば、地域に関心を持つ人の入口が年に一度のイベントだけなら、参加後に手伝える仕事や再訪する理由はあるでしょうか。あるいは、卒業や転居で離れた人が、遠くから活動を支える方法は用意されているでしょうか。これらは仮の問いです。自地域の交流拠点、学校、商店、地域団体を見渡し、最初の訪問から半年後まで関係をつなぐ担当者がいるか確かめてみたいところです。
自治体・地域事業者が確認したい行動
- 参加の入口を棚卸しする:自治体の地域政策・移住交流担当と地域事業者は、体験、仕事、学び、市民活動の募集を一覧にし、初回参加後の連絡先と次の役割を確認する。
- 「場」と仲介役を分けて決める:空き店舗や既存施設を使う場合、場所の提供者だけでなく、団体同士を結ぶ中間支援の担当、利用ルール、費用負担を明記する。
- 離れてからの参加を設計する:学校や若者団体は、卒業生が帰省時やオンラインで担える役割と、現役世代への引継ぎ方法を本人の希望に沿って決める。
- 継続を数字で見る:初回参加者数に加え、6か月・12か月後の再訪者、活動を続ける人、役割を引き継いだ人を数える。地域外からの参加を定住者数だけで評価しない。
一次資料
国土交通省「令和8年度『地域づくり表彰』受賞団体の決定」
同発表の添付資料(3事例の活動概要・選定理由、PDF)
発表日:2026年10月27日
発表主体:国土交通省

