眠る屋上を、地域の緑へ―全国で21.9haの屋上緑化が誕生

雨上がりの都市に広がる屋上庭園と壁面緑化を描いたコンセプトビジュアル

たとえば、役所や学校、駅前ビルの屋上が、設備置き場のままではなく、雨を受け止め、草木や生き物が集い、人がひと息つける場所になったらどうでしょう。国土交通省の調査では、2025年の1年間に約21.9ヘクタールの屋上緑化が施工されました。あなたの地域にも、まだ使い方を変えられる「空」が残っていないでしょうか。

目次

要点3つ

  • 2025年に全国で施工された屋上緑化は約21.9ヘクタール、壁面緑化は約4.8ヘクタールでした。屋上緑化だけで国立競技場およそ3個分に相当します。
  • 調査開始の2000年から26年間の累計は、屋上緑化が約656ヘクタール、壁面緑化が約137ヘクタールです。2024年・2025年の数値は暫定値です。
  • 国交省が紹介する近年の事例では、緑化を雨水の貯留・浸透や流出抑制、生物多様性、地域に開かれた交流空間と組み合わせる動きが見られます。

概要

国土交通省は、全国の屋上・壁面緑化の施工実績をまとめました。2025年分は造園建設会社など573社に調査票を送り、280社から回答を得た結果で、回収率は48.9%です。そのため、数値は全国のすべての施工を直接数えたものではなく、回答に基づく調査結果として読む必要があります。

屋上緑化の約21.9ヘクタールは、国立競技場の建築面積約6.96ヘクタールのおよそ3倍です。壁面緑化も約4.8ヘクタールあり、地面だけでは緑を増やしにくい市街地で、建物の上や側面を使う選択肢が積み重なっています。

国交省は、屋上・壁面緑化がヒートアイランド現象の緩和、潤いある都市空間、脱炭素への貢献につながると説明しています。ただし、今回の調査が測ったのは主に施工面積であり、個々の施設の気温低下、雨水流出、生物種、利用者数などの効果を全国一律に実測したものではありません。

具体例として、国交省資料は名古屋大学の「Common Nexus」を紹介しています。約4,160平方メートルの屋上緑化を地域にも開かれた交流空間とし、雨水管理を組み込んだ事例です。また麻布台ヒルズでは約8,864平方メートルの屋上緑化を含む緑地に、多様な生息環境や水・土壌の管理を組み合わせています。いずれも個別事例であり、全国の施設が同じ機能を持つという意味ではありません。

地方創生への意味――自分の地域に置き換えると

協会として注目したいのは、屋上を「使い切った建物の余白」ではなく、地域課題に応じて役割を持たせられる資産として見直す視点です。公共施設、学校、病院、駅周辺、商業施設などの屋上や壁面は、暑さへの備え、雨水管理、生き物の居場所、休憩や交流の場といった複数の目的を検討できる可能性があります。

ただし、緑を置けば自動的に地域課題が解決するわけではありません。建物の条件、維持管理、費用、利用者、安全性を確かめ、地域が何を優先するのかを決める必要があります。自分の地域で最初に問うべきなのは「緑化できるか」だけでなく、「この屋上を誰の、どんな困りごとに役立てたいか」ではないでしょうか。

自治体・地域事業者への示唆――明日から確認したいこと

  • 候補地を地図にする:庁舎、学校、公共施設、病院、駅、商業施設などから、未利用または低利用の屋上・壁面を棚卸しします。
  • 目的を一つ決める:暑さ、雨水、生物多様性、景観、休憩・交流のうち、地域で最も確かめたい課題を明確にします。
  • 担当と条件を横断確認する:施設管理、環境、防災、都市計画、教育、民間所有者、設計・施工の専門家で、建物条件、費用、維持管理、安全性、利用方法を確認します。
  • 小さく試して数字を残す:施工前後の表面温度、雨水量、確認できた生物、利用人数、管理時間・費用など、目的に沿う指標を決めて小規模に検証します。
  • 地域に開く方法を考える:見学、環境学習、休憩、住民参加の手入れなど、緑を「見るだけ」で終わらせない運用を検討します。

一次資料

国土交通省「全国の屋上・壁面緑化施工実績調査の結果」
報道発表資料(PDF)
調査結果・参考資料(PDF)
発表日:2026年10月16日
発表主体:国土交通省

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